1. 鎌倉の勇士・熊谷直実の葛藤と深谷上杉氏の城城 ― このコースの背景
『平家物語』の「敦盛の最期」で名高い鎌倉御家人・熊谷次郎直実(くまがい じろう なおざね)のゆかりの地と、扇谷上杉氏の一族が築いた「深谷城」、そして幕末〜明治に近代日本を築き新紙幣の顔となった渋沢栄一の生家を巡るルート。武蔵国北部の武士の気風と維新のエネルギーを体感できます。
熊谷次郎直実と敦盛の最期:一ノ谷の戦い(1184年)で、直実はわが子と同じ年格好の平敦盛を討ち取る。世の無常を感じた直実は後に出家し、法然上人の弟子となって「蓮生(れんせい)」と名乗り、敦盛の菩提を弔い続けた。
深谷上杉氏の興亡:関東管領上杉氏の一族である深谷上杉氏の本拠。北条氏の勢力拡大に伴い北条方に属したが、1590年の小田原攻めで降伏。徳川家康の関東入封後は松平忠輝(家康の六男)らが城主を務めた。
難易度・対象:初心者向け/歴史好き・中世史・鎌倉武士・幕末・偉人伝 所要時間目安:約7〜8時間(都内発着)
もう少し詳しく ― この土地で何があったか
敦盛を討った男の、その後
熊谷次郎直実は武蔵国熊谷郷の武士で、源平合戦で名を上げました。とりわけ知られるのが、寿永三年(1184)の一ノ谷の戦いにおける逸話です。
波打ち際で組み伏せた平家の若武者の兜を上げると、まだ十代半ばの少年だった。自分の息子と同じ年ごろのその顔を見て直実はためらいますが、味方が迫るなかで討たざるをえませんでした。少年は平敦盛。この出来事が直実に深い悔恨を残し、のちに出家して法然の弟子となり、蓮生と名乗ったと伝えられます。
『平家物語』が語るこの場面は、武士という生き方そのものへの問いとして読み継がれ、能や幸若舞「敦盛」にもなりました。戦の強さで名を上げた男が、戦から降りた——熊谷という土地は、その転回点を生んだ場所です。
関東管領の一族・深谷上杉氏
もうひとつの主役が深谷上杉氏です。関東管領を務めた山内上杉家の分家にあたり、庁鼻和(こばなわ)に館を構えたのち深谷城を築いて、この地を治めました。
戦国期には上杉・北条・武田がせめぎ合う武蔵北部にあって、たびたび立場を変えながら家を保ちます。しかし天正十八年(1590)の小田原征伐で北条方についたことにより、大名としての深谷上杉氏は終わりました。城跡はいまは公園として整備され、堀の一部に面影を残しています。
そして、渋沢栄一
時代は飛んで幕末。この地の血洗島に生まれたのが渋沢栄一です。農家の出でありながら一橋家に仕え、パリ万博に随行して西洋の株式会社制度を学び、帰国後は五百といわれる企業の設立に関わりました。「日本資本主義の父」と呼ばれます。
中世の武士、戦国の城、そして近代日本の設計者。ひとつの市域で三つの時代の主役に会えるのが、このコースの贅沢なところです。
2. 熊谷寺・深谷城址公園・旧渋沢邸 中ん家をめぐる車日帰りコース
| 時刻 | スポット・行程 | 見どころ・メモ |
|---|---|---|
| 08:30 | 出発:都内(首都高〜関越自動車道〜花園ICまたは東松山IC経由) | |
| 09:45 | 熊谷寺(ゆうこくじ/熊谷直実ゆかりの寺)・熊谷駅前直実公像 | 見どころ:熊谷次郎直実が出家後に開いたと伝わる寺と、熊谷駅前の直実公騎馬像 ★熊谷寺は通常、一般の境内立ち入りができません。山門の外から拝見する形になります(拝観の可否は現地の掲示・寺の案内でご確認ください)。駅前の騎馬像はいつでも見られます 料金:見学は無料 |
| 11:00 | 深谷城址公園・深谷城跡![]() |
見どころ:康正2年に深谷上杉氏が築いた城の跡。現在は公園として整備され、外堀の遺構とレンガ造りの城郭風建築が残ります 料金:公園の散策は無料/駐車場:無料 |
| 12:15 | ランチ:深谷市内 | グルメ:深谷名物「煮ぼうとう」(渋沢栄一も愛した郷土料理)、深谷ねぎ料理。 |
| 13:30 | 旧渋沢邸 中ん家(なかんち)・渋沢栄一記念館 | 見どころ:日本資本主義の父・渋沢栄一の生家(旧渋沢邸「中の家」/国指定史跡)と記念館。アンドロイドによる講義も 住所:渋沢栄一記念館=深谷市下手計1204/048-587-1100 ★入館料は無料/開館 9:00〜17:00/休館:12月29日〜1月3日(臨時休館あり) 駐車場:あり(大型バス可) ★「渋沢栄一アンドロイド講義」は人数にかかわらず予約が必要です。記念館の資料室も10名以上の団体は要予約 |
| 15:00 | 誠之堂・清風亭 | 見どころ:渋沢栄一の傘寿などを記念して建てられた英国風のレンガ建築(国指定重要文化財) 公開日・見学の可否は深谷市の公式サイトでご確認ください |
| 16:00 | 立ち寄り:道の駅「おかべ」(深谷ねぎや地元の名物・お土産) | 駐車場:広大な無料駐車場あり。 |
| 16:45 | 帰路:岡部ICまたは花園IC経由で都内へ(18:15到着) |
3. 渋沢栄一記念館は無料 ― ただし予約が要るものがあります
渋沢栄一記念館は入館無料、駐車場も無料(大型バス可)。開館は9時から17時で、休館は12月29日〜1月3日だけ。ほぼいつでも、無料で入れます。
ただし、ひとつだけ予約が必要なものがあります。「渋沢栄一アンドロイド講義」は人数にかかわらず予約制です(深谷市公式)。栄一そっくりのアンドロイドが講義をするという、ここでしか体験できない展示ですから、これを目当てに行くなら必ず事前予約を。記念館の資料室も、10名以上の団体は予約が要ります。
予約なしでも展示は見られますが、いちばんの目玉に入れないのはもったいない。電話は048-587-1100です。
4. 熊谷寺は、中に入れません
正直に書いておきます。熊谷次郎直実ゆかりの熊谷寺は、通常は一般の境内立ち入りができません。山門の外から拝見する形になります。
「直実の墓に参る」つもりで行くと、門前で引き返すことになります。そのかわり、熊谷駅前の直実公騎馬像はいつでも見られます。平敦盛を討った葛藤から出家に至る物語を思い浮かべるなら、この像の前のほうがむしろ落ち着いて向き合えるかもしれません。
5. 御朱印・御城印について
熊谷寺は通常、境内への立ち入りができないこともあり、御朱印の授与は行われていません。「直実ゆかりの地」として御朱印集めを目的に訪れても、いただくことはできない点にご注意ください。
深谷城についても、これまで複数のデザインの御城印が頒布された記録はありますが、2026年8月時点で安定して購入できる窓口は確認できませんでした。御城印目当てで訪れる場合は、事前に深谷市や観光協会の最新情報をご確認ください。
6. 費用 ― ほとんど無料で回れます
| スポット | 料金 | 時間・駐車場 |
|---|---|---|
| 熊谷寺・直実公騎馬像 | 無料 | 寺は通常、境内に入れません |
| 深谷城址公園 | 無料 | 駐車場も無料 |
| 渋沢栄一記念館 | 入館無料 | 9:00〜17:00/12月29日〜1月3日休館 駐車場無料。アンドロイド講義は要予約 |
| 旧渋沢邸「中の家」 | 深谷市の公式サイトで要確認 | 国指定史跡 |
| 誠之堂・清風亭 | 深谷市の公式サイトで要確認 | 国指定重要文化財 |
| 道の駅「おかべ」 | ― | 広い無料駐車場。トイレと休憩の基点に |
トイレ。深谷城址公園、渋沢栄一記念館、道の駅「おかべ」が基点になります。市街地と郊外を行き来するコースですが、駐車場のある施設が続くので困りません。
7. 概算費用(大人2名・普通車1台の目安)
| 項目 | 目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 高速道路料金(往復) | 約3,000〜4,500円 | 関越自動車道・花園IC/東松山IC経由 |
| ガソリン代 | 約2,000〜3,000円 | 往復でおおむね140〜170km |
| 駐車場代 | 0〜800円 | 深谷側はほぼ無料。熊谷駅周辺のみ有料の場合あり |
| 入館料 | ほぼ0円 | 渋沢栄一記念館は無料 |
| ランチ・おみやげ | 2名で3,000〜6,000円 | 煮ぼうとう、深谷ねぎ |
| 合計 | 2名で約8,000〜14,300円 | 入館料がほぼかからないコースです |
このコースを実際に組むなら
宿と車は、土日と連休の1か月前には埋まります。行く日が決まったら、先に押さえてください。
埼玉の宿を探す
車を借りる
大宮駅・川越駅で借りると、そのまま行程に入れます。
駐車場を先に押さえる
観光地の周辺は、コインパーキングが満車になると行程が崩れます。1日分を予約しておくと時間の読みが立ちます。
※ 当サイトはアフィリエイトプログラムに参加しています。料金・空室状況は各予約サイトでご確認ください。
・渋沢栄一記念館(深谷市)/見学予約について(深谷市)
・渋沢栄一関連文化遺産・関連施設(深谷市)
8. 深谷の歩き方 ― 煮ぼうとうとグルメ
主な利用IC:関越自動車道「花園IC」または「本庄児玉IC」
ドライブのアドバイス:国道17号バイパスなどがよく整備されており、各史跡間も車で15〜20分程度と非常に走りやすいエリアです。
この旅の道のり
- 09:45熊谷寺(ゆうこくじ/熊谷直実ゆかりの寺)・熊谷駅前直実公像見学約60分
- 11:00深谷城址公園・深谷城跡見学約60分深谷市内
- 13:30旧渋沢邸 中ん家(なかんち)・渋沢栄一記念館見学約75分
- 15:00誠之堂・清風亭見学約40分
- 16:00道の駅「おかべ」
※モデルコースとしての目安です。時刻・所要時間は交通状況や混み具合で変わります。
現地で撮影した写真と、説明板から起こした記録はこちらです。


