【実録】徳川家の菩提寺・増上寺 ― 東京タワーを望む、六人の将軍が眠る寺

東京タワーの足もとに、朱塗りの大きな門と黒瓦の大殿が構えています。芝の大本山 増上寺は、徳川家康が徳川家の菩提寺と定めた浄土宗の名刹です。歴代十五人の将軍のうち六人が眠り、境内には江戸の面影を伝える遺構が今も点在しています。運営耆(佐藤秀信)が両親とともに、正月のにぎわう境内を歩いてきました。

目次

アクセス — 最寄り駅は「御成門」「大門」

増上寺は地下鉄でのアクセスがよく、都心とは思えない広い境内が魅力です。三解脱門のすぐ前に出るのは都営三田線「御成門(おなりもん)」駅で、A1出口から徒歩3分ほどです。ほかに都営大江線・浅草線「大門」駅から徒歩5分、都営三田線「芝公園」駅から徒歩3分、JR・東京モノレール「浜松町」駅から徒歩10分と、四方どの駅からも歩いて行けます。東京タワーからも徒歩圏なので、あわせて巡る人が多いです。

三解脱門をくぐる

参道の正面にそびえる朱塗りの門が三解脱門(さんげだつもん)。元和8年(1622年)に再建された東日本最大級の門で、江戸初期の姿をそのまま残す国の重要文化財です。度重なる戦火や震災をくぐり抜けて現存する、増上寺で最も古い建物です。「三解脱」とは、むさぼり・いかり・おろかさという三つの煩悩から解き放たれる、という意味だそうです。門にかかる白い幕には、徳川家の家紋三つ葉葵が染め抜かれ、ここが将軍家ゆかりの寺であることを静かに物語っていました。

大殿と東京タワー — 江戸と現代が重なる絶景

門をくぐって石段を上ると、正面に堂々たる大殿(だいでん)が現れます。江戸時代の壮麗な伽藍は先の大戦の空襲で焼失し、現在の大殿は昭和期に再建されたものです。その黒い大屋根の背後に、赤白の東京タワーがまっすぐ伸びています。徳川家の祈りの場と、戦後日本の象徴とが一枚の画に収まるこの景観はまさに絶景で、運営者もしばし足を止めて見上げました。正月とあって参道には屋台が並び、初詣の人波でにぎわっていました。

徳川霊廟の面影を伝える「水盤舎」

境内の一角に、極彩色の彫刻をまとった小さなお堂が建っています。これが水盤舎(すいばんしゃ)で、もとは清揚院殿=徳川綱重(三代将軍家光の三男、甲府宰相)の霊廟にあった建物です。徳川家の霊廟の多くは昭和の空襲で失われたが、この水盤舎は難を逃れ、明治期の解体を経て現在地に移されました。今では数少ない徳川将軍家霊廟建築を伝える貴重な遺構のひとつです。軒下の組物や彩色をよく見ると、かつての霊廟がいかに豪奢であったかがしのばれます。

手水舎で身を清める

参拝の前に、その水盤舎の手水で身を清めます。竹の樋を伝う水は「飲めません」との注意書きつきだが、柄杓で手を清めると気持ちが引き締まります。両親と三人、順番に手を浄めました。

仏足石とブッシュ槙

境内を歩くと、思わぬ見どころに出会います。ひとつは仏足石(ぶっそくせき)。釈迦の足の裏の形(千輻輪相)を石に刻んだもので、仏像がつくられる以前のインドでは、こうした足石で释尊を象徴的にあらわし礼拝したそうです。増上寺の仏足石は明治14年(1881年)に建てられたもので、石の表面には車輪のような文様がくっきりと残っていました。

もうひとつはブッシュ槙(コウヤマキ)。アメリカの第41代大統領ジョージ・H・W・ブッシュ氏が副大統領時代の1982年に増上寺へ参詣した記念に、自ら手植えした樹です。徳川家の菩提寺に、現代アメリカ大統領ゆかりの木が根を張っているのも、この寺らしい懐の深さです。

六人の将軍が眠る場所で

大殿の奥には徳川将軍家墓所があります。歴代十五人の将軍のうち、ここ増上寺に眠るのは二代秀忠・六代家宣・七代家継・九代家重・十二代家慶・十四代家茂の六人。さらに、十四代家茂の正室で、公武合体のため江戸に降嫁した皇女和宮(静寛院)も、遺言によって家茂と並んで祀られています(残る将軍の多くは上野の寛永寺に眠っています)。門前には墓所拝観の案内も掲げられていました。

華やかな正月のにぎわいのすぐ隣に、これだけの将軍たちが静かに眠っています。天下を溁めた徳川家の、その最期の場所に立つと、一族の想いが自然としのばれました

実際に歩いて感じたこと

増上寺の魅力は、江戸と現代がひとつの視界に収まるところにあります。三つ葉葵の幕がかかる朱塗りの門、戦後に再び建てられた大殿、その背に伸びる東京タワー——四百年の時間が層になって重なっています。徳川霊廟の水盤舎や、六人の将軍が眠る墓所に触れると、教科書で読んだ「徳川の世」がぐっと身近に感じられます。駅からすぐで、東京タワーとあわせて半日で歩けるのもありがたい。歴史好きはもちろん、はじめての東京観光にもすすめたい一枚看板の史跡でした。

この旅の道のり

  1. 三解脱門をくぐる徒歩すぐ
  2. 大殿と東京タワー江戸と現代が重なる絶景徒歩すぐ
  3. 徳川霊廟の面影を伝える「水盤舎」徒歩すぐ
  4. 手水舎で身を清める徒歩すぐ
  5. 仏足石とブッシュ槙徒歩すぐ
  6. 六人の将軍が眠る場所で

※移動時間は一般的な所要時間の目安です。撮影時刻の記録が残っていないため、時刻は省いています。

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